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東京地方裁判所 平成6年(特わ)2838号 判決

本店所在地

東京都江東区古石場三丁目一番五号

児玉工業株式会社

(右代表者代表取締役 児玉昇)

本籍

東京都江東区古石場三丁目二番地

住居

千葉市美浜区真砂四丁目一一番三号

会社役員

兒玉昇

昭和二二年三月二九日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官阿部浩巳、同阿賀学、弁護人藤森茂一各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人児玉工業株式会社を罰金一九〇〇万円に、被告人兒玉昇を懲役一〇月に処する。

被告人兒玉昇に対し、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人児玉工業株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都江東区古石場三丁目一番五号に本店を置き、機械器具設置工事の請負等を目的とする資本金一六二〇万円(平成四年一〇月三〇日以前は八一〇万円)の株式会社であり、被告人兒玉昇(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空外注加工費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成三年六月一日から平成四年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五四六七万二五六三円(別紙1の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成四年七月三一日、東京都江東区猿江二丁目一六番一二号所在の所轄江東西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七八二八万六〇九八円でこれに対する法人税額が二八五九万七二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成七年押第一八三号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五七二四万二〇〇〇円と右申告税額との差額二八六四万四八〇〇円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成四年六月一日から平成五年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億〇八三一万四八一九円(別紙2の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成五年八月二日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七八五〇万六二四八円で、これに対する法人税額が二八五九万八三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額七七二七万六三〇〇円と右申告税額との差額四八六七万八〇〇〇円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通

一  兒玉洋子の検察官に対する供述調書

一  岩下昭一及び新里英雄の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の外注加工費調査書、旅費交通費調査書、手数料調査書、雑費調査書、雑収入調査書、事業税認定損調査書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の旅費交通費及び税務署所在地についての各捜査報告書

一  登記官作成の履歴事項全部証明書及び閉鎖登記簿謄本(二通)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の完成工事売上高調査書、期首仕掛品棚卸高調査書、交際接待費調査書及び交際費の損金不算入額調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成七年押第一八三の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の給料手当調査書、厚生費調査書、減価償却費調査書、修繕費調査書、受取利息調査書、雑損失調査書及び損金の額に算入した道府県民税利子割調査書

一  検察事務官作成の外注加工費についての捜査報告書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の2)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示第一及び第二の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人

判示第一及び第二の各所為につき、法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、機械器具設置工事の請負等を目的とする被告会社の社長であった被告人が、架空外注加工費を計上するなどして、二事業年度にわたり、合計七七三二万円余の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率は通算約五七・五パーセントである。このような脱税額、ほ脱率、犯行態様等のほか、この種事案については一般予防の必要性が高いことにかんがみると、被告人及び被告会社の刑事責任は軽視できないところである。

他方、被告人は、国税当局の査察を受けて以来、事実を認めて調査及び捜査に協力し、当公判廷においても真摯な反省の態度を示していること、被告会社は、国税当局の指導に従い、本件二事業年度分の法人税を附帯税を含め完納していること、被告人には前科前歴がないことなど、被告人及び被告会社のために有利に斟酌すべき事情も認められる。

当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮して、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金二五〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

〈省略〉

修正製造原価報告書

〈省略〉

別紙3

ほ脱税額計算書

会社名 児玉工業株式会社

(1) 自 平成3年6月1日

至 平成4年5月31日

〈省略〉

(2) 自 平成4年6月1日

至 平成5年5月31日

〈省略〉

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